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●昔ながらの製法にこだわった、楮100%灰汁煮(あくに)、手打ち叩解、紙出し、銀杏の板乾燥●

岩野市兵衛(人間国宝)さんに無理を言って作ってもらいました・・・密着取材
市兵衛さんの略歴はこちら・・・

『コウゾの繊維として生まれてくるものを、紙に仕上がるまで出来るだけそのままの状態で漉きたい』
こんな市兵衛さんの和紙への強い思いをそのまま和紙にした。素朴で質素で、優しくて力強い和紙です。

国産の高級那須楮をソバの灰で灰汁を作って煮て、叩いて・・・とにかくやれるだけやってみました。

植物の自然の素材しか使用していないので、特に染め(藍染めやベンガラ染めなどの染色)には、最適の紙。不純物の無い(ハクドも入れない)、純粋に楮の繊維だけ(那須楮100%)で薬品(苛性ソーダやソーダ灰)も一切使っていないのですごく良く染まるはず。そんな紙を探している人が、きっと居るはず・・・とのこと。すばらしい色に染め上がるらしいです。

越前和紙が誇る「こだわりの楮紙」ここに極まれり・・・という逸品です。
トロロアオイとノリウツギ
市兵衛さんのなぎなたビーター


2001年9月27日(木曜日)晴れ
灰汁の作り方からはじまりです。

 

午後からセッティングするでな・・・と
お聞きしていたのですが、待ってられずに、朝から漉き場におじゃましてしまいました。

市兵衛さんは奉書を漉いてられる真っ最中。

 

 

一転して、外には奇妙なズンドウが?

実はこのズンドウが、今回偉大な仕事をしてくれるのです。

 

釜のなかで、明日の煮込み?を待つ、那須楮たち。

ちなみにこの釜はイモノで出来ていて、昭和50年に132000円で購入したとのこと。

  さて、取り合えず明日のために、水でも入れておきましょう。
  そして、駐車場から何やら、意味ありげな袋をごそごそと・・・
 

これが、ソバの灰です。

ちゃんと書いてある

  すごく綺麗に仕上がってます。
 

このソバの灰を依頼したおばあさんは、灰をふるいに掛けて、いい灰を作ってくれたそうです。

昭和62年に入手とのこと。

ちなみに、(市兵衛さんはやたらと、数字に詳しい)このソバの灰を作るのに20000円かかった。大変な手間だ・・・とのこと。

 

さて、順ちゃんは一路、裏山へ・・・

すんば(たぶん方言で、杉の葉のこと)を取りにゆきました。・・・勿論私も・・・

 

 

まっ、杉の木の下刈りですね。

こんなもの、どうするんだろう・・・

 

いよいよセッティング変更

通常は市兵衛さんは、ソーダ灰で那須楮を煮ます。しかし、今回は出来るだけ薬品を使いたく無かったので、本当の灰の中でも、灰汁の強いソバの灰で煮ます。

そのためいつもとは余分なセッティングが必要なんです。

 

ちなみに、ソバの灰で煮る場合の灰の量は、煮る楮の乾燥重量に対して、 60%の灰が必要になります。

ソーダ灰なら12%でよいのです。
苛性ソーダならもっと少なくて・・・

つまり、薬品の強さが強いほど少量ですみます。苛性ソーダで煮たら、ちょっとしたゴミやスジも消えてしまいます。でも、市兵衛さんは苛性ソーダは使いません。

  さて、取ってきた「すんぱ」を水洗いして、綺麗にして・・・と・・・
 

なんと!さっき転がっていた、ズンドウに詰めてゆきます。

ちなみに、このズンドウもオールステンレスの特注品で、昭和40年(先代の市兵衛さん・・・これまた人間国宝・・・の時代)に購入

当時50000円だったとのこと。
灰汁を作るためだけの装置で、購入後数回しか使ってないそうです。
今回の使用は10年振りとのこと。

 

   

・・・さて続きはまた今度のお楽しみ・・・

デジカメの容量をオーバーしたため、後はカメラの現像待ちです。

     
     

2001年9月28日(金曜日)朝8時 晴れ

  朝8時、またまた良い天気です。

私が釜に到着したときには、既に釜の中はぐつぐつ言ってました。

煮るのを待つ楮は一旦奥の桶に・・・と言ってもこれもオールステンレス・・・あげられていました。

 

さて、問題の瞬間!

ズンドウに熱闘が注がれます。上手く行くかな〜

 

入れると同時に、鍋?の中ではグツグツ音がしてきました。

そしてボコボコと煮立つような気泡が上がってきます。上手く灰汁が出来るかな〜

 

試しに一ひねりしてみましょう。

おっ!真っ黒の灰汁が出てきました。

  ついてにペーハーも測ってみましょう。
  やっぱり、見事にアルカリ性の液体に成ってます。
 

よし、OK!

色は黒いけど、ゴミの無い、澄んだ液体になってます。

 

取り合えず、一旦釜の中のお湯をすべて取り除くために、

出来上がった灰汁も一旦桶に取っておきます。

  釜の中にある、残りのお湯もすべて、桶に移し替えました。
  さて、いよいよ、コックをひねって、釜に灰汁を満たしてゆきます。
  予想以上に多くの桶を必要としました。
  灰汁の色は、最初の黒い色から、徐々にコーラ色に変わり、薄口しょうゆ程度の色にまで薄まってゆきました。
 

いよいよ、釜に本格的にマキをくべます。

燃〜えろよ、燃えろ〜よ〜

     
     

2001年9月28日(金曜日)朝11時 晴れ

 

さーて、釜も煮えてきたところで

いよいよ、楮たちを煮る段取りに入りました。

 

すでに朝、一度軽く煮ていますのて、こんな感じです。

今回は、8貫目・・・30キロ(乾燥重量)の楮を煮ます。

  グツグツ煮たって参りました。
 

見事に仕事を終えた、ズンドウには、灰が固まってます。

この灰と、下に隠れた籾殻は、そのまま、釜の隣の畑の肥料に変身しました。

 

本格的に煮込む前に・・・

楮をほぐす作業です。

  いよいよ、準備ができました。
  なかなか良い煮え方・・・だそうです。
 

グツグツおいしそう?

これから50分毎に、釜の中の天地をひっくり返し・・・それを繰り返しながら、4時間煮ます。

 

釜場からのぞむ、裏山の光景

のどかですね〜

 

     
     

2001年9月28日(金曜日)午後2時 晴れ

 

さて、煮込む行程は無事

終わりました。

  釜の火も止め、これから蒸らしに入ります。
 

このように、釜に蓋をした状態で2時間、むらします。

じっと我慢ですね〜

     
     
     

2001年9月28日(金曜日)午後4時半 晴れ

  日も傾き始めた、午後四時、やっと蒸らし終えました。
 

順ちゃん、ガンバって!

もう一仕事です。

 

蒸らし終えた楮を、ステンレスの桶・・・これまた特注品で、上げ底になってまして、垂れた液がまた釜に戻るように細工されてます。

ちなみに・・・またまた・・・この装置は、割と最近平成10年に作りました。装置代70000円成

 

見事にゆで上がっている(あれ表現がおかしいのかな?)でしょ。

作業工程としては、通常のソーダ灰での作業と全く変わらなかったとのこと。

液が黒いことを除いては・・・

 

ほら、ちゃーんと繊維がほぐれます。

明日は、ちり取りですね・・・

     

2001年9月29日(土曜日)午前11時 またまた晴れ

 

さて、今日は昨日煮上がった楮の、ちり取りをしているはず

おばあちゃんに、奥さん、市兵衛さん、順ちゃんと、一家総出で作業です。それでも数日かかります。

(ゴミを取り除く・・・これが不十分だとそのまま、紙に仕上がってしまうため、慎重に慎重に・・・静かに作業は進みます)

 

  「見てみね、こんなに違うんやざ」と市兵衛さん

右が、ソーダ灰で煮た楮・・・白い
左が、今回のそば灰で煮た楮・・・黒い

これが白くなるんかな〜

 

「ほやけど、昔はこやって作ってたんやでぇ」
(だけども、むかしはこうやって作っていたのだから・・・きっと仕上がりは、昔と変わらないはず・・・)

色が黒い意外は、楮としては、十分煮えているし、通常のソーダ灰煮の仕上がりと比べても、全く違わない・・・とのこと。

  このように、一本一本の繊維を光と水に通しながら、細かいゴミを見逃さないように・・・
  ちり取りの作業は静かに、静かに、続くのでした。
    「月曜にはネリを作るでな」・・・とのこと。
     

 

2001年10月1日(月曜日)午前10時 小雨模様・・・徐々に晴れ

     
 

ついに降りました今日は雨。

洗い場から裏山を眺めた図

 

 

このように、裏山の谷川の水を引き込んで洗い場に水が溜められます。

 

 

谷川の水を流し入れながら、丸一日さらします。

このトロロアオイたちはすでに昨日から、水で洗われている状態です。

今日は雨なので水が濁っているのが残念です。

  さて、水揚げ完了!
 

順ちゃんは早速木槌でたたき始めました。

実は私、初めて見ました。ネリは機械で叩くものだとしか・・・このような図は想像していませんでした。

ビックリ!

 

「あまり大きなのはアカンのや」とのこと。

大きいと木槌で叩くとすぐに皮が割れてしまって、良くないそうです。

トントンと丹念に先の細い部分まで叩いてゆきます。

ちなみに、このトロロアオイは群馬産

 

こんな風に、ペチャンコにたたきます。

でも、あまり叩きすぎるのも良くないとのこと。

叩きすぎを防ぐため、機械は使わず、木槌でたたくのです。

 

そしてまたまた、谷川の水で、洗い流します。

水分を含むことで、トロロアオイ特有の粘りがドンドン出てきます。

 

一方こちらは、同じネリでも皮ネリ・・・

ノリウツギですね。こちらは北海道産で(北海道ではサビタと呼ぶらしい)7月8月ごろに取れます。
飛騨地方でもニレの木と言って、取れるらしいのですが、北海道産が良いとのこと。

  このように、一枚の樹皮です。ネバネバしてますが、このねばりは、トロロアオイに比べると、弱い粘りだそうです。
 

ネリは総じて、取れ立てよりは、時間をおいたモノのほうが、粘りが良い。

「トロロアオイは粘りが強すぎて、繊維が伸びない。ノリウツギを使うことで繊維が伸び切って良い紙が漉ける・・・」

ネリにもスゴイこだわりが感じられます。
市兵衛さんはトロロアオイとノリウツギを混ぜて、ネリを作ります。

 

さて先ほどから谷川谷川と言ってますが・・・
どんな川か?と言いますと・・・

こんな川です。

ここから作業場まで、水を引き込んでいるんです。

小一時間、ネリ作りを進めるうちに、晴れてきました。(やっぱり良いこと有りそう!)

   

越前には、大きな山や川は無いのですが、わき水などは不思議に豊富です。
ちなみに、私(杉)の会社の敷地内には井戸が3つもあります。

     
     

 

●番外編、トロロアオイの花と実●卯辰の工芸館
2001年10月2日(火曜日)午前11時 再び晴れ

  「今、ウダツの工芸館の前にトロロアオイの花が咲いているから、見て来ね!」と言われてやってきました。
残念ながら花は上にかすかに残る程度で、立派な実がいっぱい出来てました。
 

こんな風に元気に実ってます。

花を見られなかったのが残念!

     


2001年10月4日(木曜日)午前10時 曇り

 

さて、いよいよ手打ち叩解です。

「上手く仕上がった、まぐれ当たりや」と市兵衛さん、
すごく上手く煮上がって、繊維のほぐれ具合が非常に良い状態との事。

 

ちり取りをした状態で、台の上に乗っていただきましょう。

先ず十分水気を切ってから・・・

 

この台はケヤキの台です、叩く棒はカシの木です。
いつもの繊維に比べて、ソフトな感じ、柔らかい感じに思う。

「言葉では上手く言い表せんな〜」「考えておく」とのこと。

 

このように、叩きます。手打ち叩解です。
叩いて広がったら一旦また中央に原料を寄せて、クルリと回転させてまた叩き始めます。

これを「マクリ」と呼びます。

  大体、4マクリしてから、ビーターにはこびますが、このまま叩き切ってしまうには、10マクリほど必要で、約2時間の重労働になります。
  このように、棒を板と水平に打ち下ろせるようになったら、一人前。
  手打ち叩解をしたばかりの、楮です。
 

光に透かすとこんな感じです。

なんだか生きている!・・・って感じがするのは私だけ?

     


2001年10月3日(水曜日)午後 晴れ

 

手打ち叩解をした、原料は「なぎなたビーター」にかけられます。
昭和37年にこのビーターを取り入れたのは先代(8代岩野市兵衛・・・同じく人間国宝)
考案者は高知の高橋さんが考案したとのこと。

単に伝統を継承してゆくだけでなく、使ってみて良いものであれば積極的に取り入れてゆく・・・という柔軟性も併せ持つ先代でした。

 

しかし、機械に任せてしまってはいけない。
・・・と、ピーターの最中も常に、時間をみながら、原料のほぐれ具合を手で感じ、時には水の流れを意図的に滞らせたりして、掛かりすぎないように・・・繊維が短くなってしまわないように、注意します。

 

「どうや?見事にほぐれているやろ」

「上手いこと行った〜」

「まぐれ当たりや〜」(灰汁煮が上手く仕上がったので)
通常は8分程度ナギナタビターをかけるのですが、今回は大変に上手く仕上がったのでビーターは4分で十分・・・のとこ。

 

ビーターから下ろした原料は水切りをして・・・

この青い容器の下に細かい網があって、水を切る仕組みになってます。

「なんか、スベル感じがする(楮なのに・・・)雁皮や三椏のような紙に仕上がるかも知れんな〜判らんけど〜」

 

桶の中に、納まってゆきます。

明日はいよいよ「紙だし」です。

 

一方、順ちゃんは、次の紙漉のために、楮を煮る前に大きなチリやゴミなどを取り除く作業をされてました。

とにかく何から何まで、根気の要る仕事です。

 

ところで、先日洗い場で叩いていたトロロアオイは、見事にネリの成分を出して、ネバネバの状態に成っていました。

準備オッケー!

     

追記・・・市兵衛さんのなぎなたビーター

 

市兵衛さんのなぎなたビーターです。

鋭利な刃物のように見えますが、切れるような歯ではありません。

楮の繊維同士をいっぽんずつバラバラにするためのものです。繊維をカットする力はありません。

しかし、異様に長い刃先です。特注品だそうです。

 

参考までに、こちらが一般的ななぎなたビーターの歯です。

 

 

2001年10月5日(木曜日)午前8時30分 曇り

 

さて、順ちゃんいよいよ原料作りも大詰めに成ってきました。

今日は「紙だし」です。このようにほぐれた楮の繊維たちを、谷川の水で晒します。

 

何度も何度も手でかき回して、十分に楮の中のでんぷん質を洗い流してしまいます。

こうすることで、虫食いの無い、強靱な、楮の繊維だけにしてしまうのです。

 

隅の部分を何度も何度も、最後の一本まで、ゆすぎ切る思いで何度も右手を回転させます。

これは、冬は特にきつそうな仕事です。

  紙出しを終えた繊維たちは、このように、お餅みたいに並べられてゆきます。
 

「名前は決まったんけ?」「琥珀(こはく)古代紙とか、どうやろ・・・」と順ちゃん

丹念に丹念に、楮が水洗いされて行きます。

 

紙だしをする前(下)と紙だしをした後(上)

ただ、水の中でかき回しただけ?(失礼)なのに、色が白くなります。

やはり、大切な作業なんですね。

ちなみに、苛性ソーダで煮てしまえば、少々のゴミは漂白されてしまうので、紙だしをする必要がないのです。
紙出しは、こだわりの証?

   

★パンパカパーン★
いよいよ紙漉です。

ここまで来るのが長かった〜

いやいや、これからが肝心なんです。

 

「杉原はん、もう紙が漉けるぐらい、紙漉きに詳しく成んなったやろ〜」と市兵衛さん。

今朝は6時から紙漉をしているとのこと。

 

 

このように繊維の固まりなど、不純物を発見したら、その場で針で取り除いてしまいます。

この簀に面した部分は紙の表になります。(岩野さんの場合)

「カオリン(ハクド)が入ってえんで、よ〜く繊維が見える・・・」

 

徐々に紙の厚みが出来てゆきます。

チャポン、チャポンと軽快なリズムをきざみます。
とても静かな時間です。

市兵衛さんの場合はこの、最後にすくった原料が紙の表となります。簀に当たった面が裏肌に仕上がります。
(ちなみに、秀雄さん・山口さん・梅田さんはなど、奉書はすべてこのようになります。)

(平三郎さんや柳瀬さんの「鳥の子」は逆に簀の肌がそのまま板に貼り乾燥されます。意図的に雲肌を作る場合は逆になる)

鳥の子系の紙は、簀の肌が表
奉書系の紙は、簀の反対側が表です。

  仕上がった紙は、順番に伏せられてゆきます。
長年の経験で培われた動作は、よどみなく、舞を舞っているよう。(ちょっと大げさかな?)
 

「色々な漉き場に行きなったら、簀(す)が2枚有るか?見てみね・・・」とのこと。
2枚使っているのは、それだけ紙に注意をはらっている証拠とのこと。

「しかし、紙が売れんようになったな〜」「紙漉きやめなあかんかも知れんな〜」
と冗談ともとれない言葉。

良い技術も、良い職人も、使って戴ける生活者が居なければ、成り立ちません。
伝統工芸の厳しい一面です。

 

 

軽快に楮の繊維が紙に仕上がってゆきます。

まさに、水と自然が生み出す、和紙の不思議ですね。

 

このように、漉いている間、もう一枚の簀は伏せられたままです。

すぐに簀を上げようとすると、気泡が入ったりして、綺麗な紙にならない。
2枚の簀を使うのは、良い和紙作りへのこだわりだそうです。

     

2001年10月6日(金曜日)午前8時 快晴

 

おっはよ〜
今日は朝から板場です。

 

  「今朝はだいぶ早くから、貼ってるんや〜」とのこと。
 

一枚ずつ慎重に「シトガミ」からはがします。

「シトガミ」なんて呼び方は、越前だけかな〜?

 

今回は菊判(94センチ×64センチ程度)の大判で漉いて貰ったので、板も大きいです。

岩野さんで漉くことができる、一番大きな板です。ちなみにこの板は銀杏のそれも雌の銀杏の板です。銀杏は年輪の跡が出なくて、表面 が滑らかなので、美しい肌合いに仕上がります。

 

銀杏の木は貴重品で、大きな銀杏でないと、つなぎ目ができてしまいます。

そのつなぎ目がそのま紙の肌合いとなるので、つなぎ目のない銀杏の板は貴重品なんです。

  「一枚ちゃ〜んと貼ったあとに、これでいい、と思った後に、もう一度軽く撫でる・・・これがまた、良い紙を作るコツ・・・」とのこと。
 

このような大板を、むかしは天日で干していた・・・「重かったでの・・・外まで運ぶのは」

「試しに持ってみね」
と言われて私・・・持ってみました。確かに重い、そして想像以上に厚みがあって、ズッシリしてます。これまた重労働」

  両面に貼り終えた板は、一枚ずつ、「ムロ」(乾燥する押入のような場所)に入れられます。
     

2001年10月6日(金曜日)午後4時 快晴

  さーて上手く乾いたかな〜
  「これからもう一回乾燥しようと思うで、今日の乾燥が全部仕上がるのは8時頃やの」
  乾いた紙は一枚ずつ、板から剥がされて・・・
  ちょっと真面目な?順ちゃんの表情。
 

うわー
いい感じに仕上がってます。出来たてのホヤホヤといったところ。

  温かい紙です。
 

随分光沢のある

やさしい感じの紙に仕上がりました。

 

この作業は日が暮れるまで・・・日が暮れた後も続いてゆきました。

ありがとうこざいます。

     

2001年10月17日(水曜日)午前9時 くもり

 

漸く無事仕上がるこの日を迎えました。

一枚ずつ丁寧に検品されてゆきます。

  「ここがチョットあかんのや・・・」
と指さすあたり、
 

確かに回りより少し薄い気がします。

厳しい検品をくぐり抜けて、製品と仕上がったのは210枚

 

100枚は裏面に「岩野市兵衛」の朱印を押して戴きました。

残りの110枚はあえて、朱印無しです。(絵を描かれたり、加工される場合を考えて・・・)

     

2001年10月17日(水曜日)午前10時 くもり

  そして、さらにお願いしました。揉んで戴けないかと・・・
 

市兵衛さんの純粋な和紙は、揉み込んで柔らかくしますと、高級な刀剣用の拭き紙として使われます。

今回作成した紙もこのような使用法も想定して、敢えて少し薄目に漉いてもらった訳です。

  そして、何度も揉んで、揉んで、また揉んで、・・・
     

●ジャ〜ン!完成で〜す!!!●

●一枚 20,000.00円●

●商品No : SH-ICHIBEI-AKUNI
●単価 :  20,000円---960x660mm 耳つき
  単価 :  4,000円---210x297mm 耳切り上げ(A4判)
●厚さ : about 210 micrometer
●重さ : about 37 g
●人間国宝「岩野市兵衛」の手により作成された
昔ながらの越前生漉き奉書です。
ソーダ灰も使用せず、蕎麦の灰で灰汁をつくり
煮て、叩いて・・・昔ながらの製法をそのまま再現!

【人間国宝が自ら漉き上げる一枚。】

「楮の繊維として生まれてくるものを、出来るだけそのままの状態で漉きたい」そんな岩野市兵衛氏の和紙への思いが凝縮された究極の逸品。昔ながらの製法にこだわり、その工程のすべてを自らの手仕事で行い、一枚一枚丁寧に漉き上げます。素朴で質素で、優しく力強いその存在感。越前和紙が誇る最上の楮紙です。

2001年9月に作成した、「簀漉き」は完売しました。
2007年12月作成の、「紗漉き」も在庫少なくなりました。

 

 

「すごく、柔らかい紙に仕上がった」
「通常はカオリンを入れて、柔らかくなるのに、今回の(こだわりの製法に乗っ取ると)紙は、すごく柔らかいなぜだろう?」
色合いも混じりっけ無しの、楮の自然色

  このように朱印を押印した紙が100枚と、押印無しが110枚仕上がりました。
  そして、この紙を、贅沢に揉んでみました。
 

光沢がすごくあります。

そして揉んだ後のなんとも言えない柔らかさ。
およそ紙とは思えない仕上がり。

今回の紙は混じりっけ無しの紙で、滲み止めもしていません。

仮に、本格的に衣類として使う場合は、コンニャク糊を引いて、揉み込むと、軽くて丈夫な紙衣(かみこ)となります。

    この揉み紙には特殊な用途があります。
★刀剣拭き紙はこちら…

 

 

コンャニャクのりを引いて、水揉みしました。

しなやかな市兵衛さんの奉書に丈夫さが加わり・・・まさに、紙を超越した素材に感じられます。

     
     

市兵衛さんのその他のバリエーション

 


『国宝と呼ばれるな、私は職人である』
『名人と呼ばれるな、私はまだ生きている』

先代(8代目市兵衛さん、同じく人間国宝)の言葉をそのまま継いで、良い紙ができるのは技術では無く、水のおかげ・・・
と、こともなげに、あっさりと言い切ってしまう。そんな市兵衛さんがこだわった、「楮として生まれた繊維をそのままの状態で紙にする。」
簡単そうでいて、実は大変な作業を、市兵衛さんは今日も(当たり前に)続けられています。

〜神の授けをそのまま継いで〜親も子も漉く孫も漉く〜♪ 
〜清き心で清水で漉いて〜干した奉書の色白さ〜♪(越前紙漉唄)


ご質問やご意見も何なりとお申し付け下さい。
精一杯対応させて戴きます。

この和紙の呼び名(ニックネーム)商品名も募集しています。

現在の応募・・・結局決まらないまま現在に至る・・・

●とても感動いたしました。鳥肌がたつほどに。
一度で良いから触れみたい、でもそんなことが許されないような神々しさを感じさせる和紙だと思いました。『命の紙』『いのちの紙』が浮かびました。
この和紙からは強い魂や意志が感じられるので、この名を付けました。(京羽さん)
●「木の章」前田雨城先生の色、染と色彩からこの口伝の木の章の内容に感銘〜自然(かみ)により創造され人間(ひと)と同じ生き物なり、愛(なさけ)をもって取り扱い、木霊への祈りの中で染めの業に専心(こころ)すべし〜!というものです、共通するもの感じました。(bucjrさん)
●「倭の国」「倭国」日本古来の製法に、日本を代表する紙として人々を心から動かす力を持ったお品物こそが、広くその良さを認めさせるのだと思います。(hirokoさん)
●「手漉き市兵衛」(熊本のsさん)
●「いにしえがみ」「こだわりの市兵衛楮紙」 「こだわりシリーズ」 「琥珀古代紙」「琥珀楮紙」(福井のIさん)
●「昔ながら」「むかしながら」(Hさん)
●「灰汁煮(あくに)市兵衛紙」(杉)
●「古来製法再現越前奉書(人間国宝、岩野市兵衛作)平成13.10.16 」(Hさん)
●「ぬくもり紙」(埼玉県小川Fさん)
●ズバリ「市兵衛」(akira-yさん)うーむ、シンプルで力強い・・・いいな〜
●「市兵衛のこだわり」「岩野市兵衛」「9代目(?)市兵衛」
●「こだわりの手漉き紙」「灰汁煮手漉紙」「市兵衛奉書」以上はカナダの池田さんより(うーんなんだか、解らなく成ってきた・・・杉)
●「THE和紙・越前市兵衛」yamguchiさん
●「神(しん)」aokiさん、シンプルでいい感じ。
●「天女の羽衣」で。  tulipr3
●「心」(しん)、越前和紙の「心」ということで、東京在住のミシュランさん
●「市兵衛 魂の越前和紙』」愛情と情熱そしてこころがこもってい て、誇りに思います。下野の国の高田より
●「水絹紙〜きらら紙〜」水が大事だと市兵衛さんが言われた事とその和紙を見てとてもきれいで布で表現すると絹かな?と思いました
●本来はこんな読み方をしませんが・・・きららと名づけました。(^〜^)岐阜のt4kより
●「品」・・・品という字には「人や物にそなわっている、好ましい品格・品質」という意味があるので、何に使っても、最高のクオリティが演出される紙ですよ、ということを表せると思ったのでつけました。あと、品という字は四角が三つくっついた字で、字の見た目も格好いいかなと思いました。・・・東京都のゆかピュータより
●「粋」(いき)、「清い紙市兵衛」、「清紙市兵衛」・・・hanachan様より
●「勇清」はどうでしょう一つのものを作り続ける勇気と、一途な心の清らかさ!こんな風に一つ一つ丁寧に作り出される紙は、それだけで芸術品なんですね。・・・satomaho様より。
●「意心伝紙/"Re:communication"」

●『然』(ぜん):いかにもそのようなさまの意を表す。
職人としての気質と情熱を自然からのお恵みにそのまま生かさせていただく市兵衞さんの謙虚さと万物に対し、畏敬の念をお持ちなお方であることをこころで感じるまま…思い浮かべたのはこの『然』の一字になりました。・・・y.kujiraoka様より20080609

●生越前の紙 一絵(しょうえちぜんのかみ いちえ)
一絵は、市兵衛様のお名前からのもじりと、一期一会からでております。
20090928 clione様

本当に感動しました。ありがとうございます。
この和紙にモネの「睡蓮、日本の橋」を印刷したい!
そして自分の絵も描きたい!

・・・naoki.daisho様より。

★★いろいろお名前をお寄せ戴きありがとうございました。
結局なかなか決まらないまま、今に至っていますが…
先日市兵衛さんにお聞きしたら…
「ほんとの事で名前付けるとしたら、やっばり『越前生漉き奉書/草木灰煮』だろうな〜」とのこと。
これで決まりかな〜

 

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・・・お客様の声・・・

●なんと制作の途中から、既にご注文がありました。京都のI様ご注文第一号ありがとうございました。
『すごく、ええ紙です・・・ええ色です・・・使うのに気合い入ります・・・』
紙は使ってこそ命が宿ります、どんどん使ってください〜と、お願いしました。

●東京のSさんから、私も嬉しくなってしまうメールをいただきました。
『・・・焦る気持をおさえつつ、封を開けると中からまっさらな紙。 びっくりしました。
「天然」とか「自然」という言葉から少々イメージしていた粗野な 感じはまったくなく、
すきのない純粋な美しさがありました。
変な例えかもしれませんが、生まれたての赤ちゃんみたいですね。
無垢で何にも染まっていなくて、そして神々しい……。
こんな素敵な紙が作れる日本の文化ってすごいですよね。
本当に感動しました・・・ 』
う〜む、まさに、岩野さんの人間性・・・そのままを ズバリ見抜かれたSさんの言葉に、私(杉)も感動してしまいました。

●福岡県で、紙漉修行をされているMさんより、スゴイ内容で、気が引き締まります。
『・・・岩野市兵衛様の紙はあくまでも私個人の宝物にしたいと思います。紙を作っ ている者として、手抜きしたくなった時や気持ちが入らなくなった時、岩野様 の紙を見せていただいて、気持ちを入れ直したいと思います・・・』

●八女和紙の松尾さまより
『岩野市兵衛様の紙、本日夕方、拝受いたしました。 まさに、「紙は神」とはこの事だと思いました。  
ドキドキしながら封を開け、紙を手にした時、自分の体温が熱くなるのを感 じました。巻き口から、少し開いただけで、紙から発する存在感が、とにかく すごいのです。どのように表現したらいいのかわかりませんが、静かに存在し ているだけなのに、やはりものすごいオーラを感じるのです。人間の生き方の 極みのような、意図したものでもなく、楮、灰汁、ねり、水、等、とにかく、 あらゆる素材を知り尽くし、また、それに逆らうことなく、すべてのものをあ るがまま一番いい形で紙という姿に漉き上げた、自然の美しさ、空気、水、ま た、人の呼吸などが、共鳴し合い紙へと形成されたような、なにかやはり、神 に近い極まりを感じます。  
私は、恥ずかしながら岩野市兵衛様の紙を手にしたのは初めてですが、率直 に、やはり、人間国宝だ・・・と思いました。たった一枚の紙にこんなに感動 したのは初めてです。紙の世界は常に裏方の世界ですが、また、それがあるべ き姿だと思いますが、本来、裏方である紙にここまで極まりの紙を自然な姿で 作りあげられる岩野様はまさに、国の宝であり、紙漉の私達にとって、本当に 誇りと思えるお方だと思いました。  極まりの紙なのに、なぜか紙が威張るでなく、次に来るであろうものを自然 に受け入れるというか、きっと使われる作者の方々とも自然に融合し合ってい くであろう寛大さのようなものも紙から感じられるのです。岩野様の紙に対す るこれまでの真摯なお姿が紙の表情から感じられる思いです。  自分がこれからどれだけ紙に関わっていけるかわかりませんが、この紙を見 せていただいて、まだまだなにもわかりませんが、なにか紙漉としての生き方 のようなものを教わったような気がしています。  この紙を手に出来ました事、心から感謝いたします・・・』
読んでいる私が(杉)感動してしまいました。ありがとうございました。



九代 岩野市兵衛さんの略歴

1933年(昭和8年) 越前市大滝町に生まれる

1949年(昭和24年) 南越中学校を卒業。八代と伯父、岩野正男に師事

1978年(昭和53年) 通産大臣指定の伝統工芸士(越前和紙)に指定。九代 岩野市兵衛を襲名

1986年(昭和61年) 福井県和紙工業組合の理事になる

1987年(昭和62年) 米ボストン美術館蔵の北斎木版画複製のため、奉書6000枚を漉く

1997年(平成9年) 県指定無形文化財保持者となる

1999年(平成11年) 衆議院議長公邸の天井と壁の用紙1730枚を漉く

2000年(平成12年) 重要無形文化財保持者(越前奉書)に認定される

2003年(平成15年) 旭日小綬章受賞

 

以上は、市兵衛さんから戴いた略歴をそのまま掲載させていただきました。

「重要無形文化財保持者」とは 俗に「人間国宝」と呼ばれます。
ちなみに、お父上の八代 岩野市兵衛さんも人間国宝の認定を受けておられました。
by 杉



 


この素晴らしい紙を使って、こんな作品が出来ています。

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その他の市兵衛さんの紙はこちら・・・

 

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