washiya 杉原商店 和紙っていいよね・・・通信 vol. 7

     和紙屋杉ちゃんのひとりごと 8月号 2000/08/01

          http://www.washiya.com

            =================

今年は見事にカラ梅雨でした。
水不足が心配なこの頃ですが、暑さに負けず元気に行きましょう!

■□■ 今回のみどころ ■□■

1) 2000円札・・・お札のふるさと(局紙)
  
2) アーティスト・イン・レジデンス

3) 和紙のお店オープン情報

4) イベント情報

============================================================

1)お札のふるさと(局紙)
   
============================================================
先日沖縄サミットにあわせて、2000円札が発行されました。(もう手に入れられたかな?)
オモチャみたいですね。そのうち風格が出てくるのでしょう。
この「お札のふるさと」って越前和紙なのです。
今回はちょっと不思議な和紙の名前『局紙(きょくし)』の話です。

局紙・・・不思議なこの名前は比較的最近になって使われはじめました・・・と言っても100年
以上前ですが・・・いまだに鳥の子局紙と言う呼び方もございますので基本的には鳥の子の一種
です。ただこの名前のおもしろいところは、この局は『大蔵省印刷局』の局だという点です。明治
時代の初め『太政官札(だじょうかんさつ)』(明治政府のいわゆるお札)が越前(福井県)で
抄紙されました。やがて大蔵省にて抄紙されることになるのですが、そのときには、福井から
7人の職人が越前の技術を伝えるために、大蔵省に赴きました。余談ですが、その方々は『越前の
技術を持ち出した者』として、二度と越前の地を、踏む事は許されなかったそうです。
現在でも大蔵省には越前の紙の神様「川上御前」が祭られていて、毎年の和紙の祭りには必ず
参列もされます。

1876年のパリ万博で好評を得て、1919の歴史的な「ベルサイユ条約」(パリ講和条約)の調印
正文用紙にも採用されました。

さてその抄紙方法ですが、通常の奉書などとはちょっと違います。
奉書や鳥の子など、通常の和紙はネリを使用して何度も原料を汲み上げて地紙を作ります。
(流し漉き)一方局紙はネリを使用しません。そして一度にガパッとすくい上げます。
(溜め漉き)一度に厚く硬い和紙を抄造するのに適しています。ちなみにフランスなどの
手漉き和紙の抄造方法に大変よく似ています。

「透かしの技術」・・・もう一つ越前から伝えた和紙の技術の一つに「透かし」の技法が
ございました。お札の中心に有る顔写真のような透かし・・・これは黒透かしと言いまして、
本来越前独自の技法であったのに、この技法をお札に使用されるように成ったため、以後国内
では「黒透かし」の技法で和紙を抄造することは御法度となりました。
大変理不尽な話ですが、以後、越前では黒透かしの技法は無くなりました。その代わりと言って
は何ですが、「白透かし」の技法を利用して株券や卒業証書の殆どを越前で生産しています。

「黒透かし」・・・お札を取り出して、すかして見て下さい。単純に黒かったり、白かったりする
だけでは無くて、濃淡のグラデェーションがまるで絵画のように表現されていますよね。これが
黒透かしなのです。どうやって作るのかは・・・秘密・・・です。

「白透かし」・・・卒業証書や株券をすかして見て下さい。(「はごろも」の見本帳をお持ちなら
ナンバー8番)文字やロゴなどが薄く透けて透かしと成ってます。しかし、濃淡のグラデェーション
はありません。これが、白透かしです。この技法ならお縄にはなりません。

なお、現在でも局紙は偽造防止などの特殊用途で使用され、主に株券や卒業証書として多く用いられ
ます。昨年の悪名高い?地域振興券を越前和紙の「白透かし」技法の和紙で手にされた方も相当数
いらっしゃったのです。(ちなみに福井県の振興券は全て越前和紙でした。)
またこの局紙技法をもってしますと、厚く仕上げる事が簡単なため、名刺やはがき、カードとしての
需要にも根強い人気がございます。


局紙漉き職人・・・加藤さんの現場風景
http://www.washiya.com/meister/katou-1.jpg


漉き上がったばかりの局紙はまるで豆腐のよう・・・
http://www.washiya.com/meister/katou-2kami.jpg


加藤さんのスナップ
http://www.washiya.com/meister/katou-3face.jpg

============================================================

2) アーティスト・イン・レジデンス

============================================================
じつは海外より「住み込みで和紙の作品作成」が出来る制度が無いか?との問い合わせがございました。
早速、和紙のメーリングリストのメンバーより、情報収集して、まとめてみました。
(英訳もございます。)

●海外アーティスト受け入れのお問い合わせ先一覧●

【土佐和紙】高知県立紙産業技術センター
info@kochi-pt.pref.kochi.jp
TEL 088-892-2220
tosawasi@basil.ocn.ne.jp

【阿波和紙】徳島県
レジデンスのような補助制度は確立できていませんので、実習室使用料、原材
料費などは請求させてもらっています。
info@awagami.or.jp

【越前和紙】福井県今立郡今立町、今立芸術館
ART CAMP 2000・・・IMADATE ART FIELD主催
作家を一般から公募し、滞在しながら和紙を材料に創作してもらい、過程を一
般の人に公開する企画。残念ながら今年の10名の選出は終了しました。
この企画はアーティストインレジデンスとして国内では20年前から行われてい
ます。IMADATE ART FIELDは現代美術としての活動なので誰
でもというわけには行きません。選考会がございます。
tel 0778-42-2700
arthall@town.imadate.fukui.jp

【美濃和紙】岐阜県
事業内容、美濃和紙をテーマにした独創的な作品作り
募集人員、20歳以上の内外の芸術家6名
審査あります。
本年度の締め切りは終了しています。
お問い合わせは、美濃市文化会館内、
美濃・紙の芸術村実行委員会
Phone 0575-35-0522
Fax 0575-35-0144

尚!受け入れに当たって・・・『ここで何をしたいのか、また求めている条件を明確に
した企画書などを用意 すること』が必要です。ちなみに・・・これは、どちらの産地の
施設、プログラムを 使われるにしても、必要とされると思います。
=======
以上は和紙のメーリングリストのメンバー近藤様、近森様、塩谷様、長田様、深和様から
の情報を元に編集しました。その他の産地でも、そのような制度をがございましたらご一報下さい。

---上記文章の英訳。---(熱海さんありがとうございました。)
http://www.washiya.com/washinomokuji/english.html#Anchor896423

============================================================

3) 和紙のお店オープン情報

============================================================
岐阜から、新しい和紙のお店の開店情報が入りました。

【岐阜】
7月7日に新しい和紙の店がオープンしました。
店の名前は「紙の蔵」です。
岐阜駅の高架下に新しくワールドデザインシティー「アクティブG」という店ができ、
そのなかに、岐阜県紙業連合会として、40坪を賃貸し、和紙を小売をすることとなり
ました・・・とのこと。

============================================================

4)  イベント情報

============================================================
さすがに、夏休みで、イベントは盛りだくさんです。

【福井】いまだて芸術館
8/1〜31人間国宝、岩野市兵衛展
8/24、19時〜「生漉き奉書を漉く」岩野市兵衛氏の講演会(無料)

【福井】今立町生涯学習センター
8/5(土)13〜15時半夏休み親子講座(無料、飛び込みOK)
「驚きの機能紙」特種製紙大村氏
「自分で出来る障子張り替え」
TEL0778-43-7823

【岐阜】美濃和紙の里会館
7/7〜9/4和紙を彩る二つの世界
森からの贈り物 -北山敏・早苗の世界
週間新潮表紙絵-成瀬政博の世界
作品はすべて美濃和紙にエプソンのプリンターでプリントして展示されます。

8/5デジタルプリントセミナー
「手漉き和紙へのアート表 CGからピエゾグラフへ」が開催されます。エプソン内堀
さんのお話あり。
以上お問い合わせ
電話0575−34ー8111 ファックス 0575−34−8280
8/6創作ふれあい体験教室
和紙とプリンタによるランプシェードの制作教室を開催

【奈良】
7/20〜8/31薬師寺にて夏休み子供向け企画
薬師寺東僧坊ホール「薬師寺行事と和紙」平山画伯のコーナーのほか、紙漉き工程や解説
、ビデオ放映などを展開します。

【東京青山】
8/18〜30青山伝統産業館
伝統工芸会連合会のイベントに越前和紙出店

【徳島】
8/5夏休み親子教室「折り絵でひまわり」
8/6夏休み親子教室「がらくたアート教室」

8/16〜20日手漉和紙研修会
楮の皮を500g渡して、原料処理から紙すき、乾燥まで自分でしてもらいます。他にも染め
などのミニ講習もしたりして、6日間くらいの工程です。お知らせいただければ案内を
お送りします。
季刊和紙の17号の阿波和紙特集でも研修会の記事を載せています。
http://www.awagami.or.jp

8/16ワークショップ「インテリアボード」
8/16スライド講演「和紙の劣化」
8/17ワークショップ「柿渋染め」
8/18ワークショップ「折り本の作り方」
8/19ワークショップ「風船張り子」
8/20ワークショップ「和紙の染め」
問い合わせ
TEL0883-42-6120 FAX0883-42-6085

【伊勢市】
8月7日から13日、時間は午後1時からです。
詳しいメニューは未定ですが、例年、手すき和紙はがき(8枚)を漉いて、
図柄の飾り付けをしていただいて、翌日の朝乾燥させて、郵送、という
感じでやってます。これで、送料税込み1200円です。
昨年は「押花しおりづくり」も好評でした。
今年は、半紙版の手すき和紙もメニューに加える予定です。こちらは即日乾燥して
お持ち帰りができます。
参加目標は、期間中で100名、という、ささやかな会です。
大豐(たいほう)和紙工業株式会社
516-0079伊勢市 大世古(おおぜこ)一丁目 10-30
(0596)28-2359

【東京、梅ヶ丘】
9月1日(金)〜9月13日(水)「梅ヶ丘アートセンター」
「経師の世界」・・・千年余を越える経師の仕事が、今日ではどのように展開されている
のか。経師職の技術とその広がりを、広く紹介すると共に、後継者に伝達することを目的
とする。
<出展者>玉田譲治、三竹志朗、小宮山健夫、浜中淑光ほか
<展示内容>・襖・屏風・掛け軸・和紙壁張り・画帳・衝立・額・巻物を展示する。
修復も含む。・作業工程の写真ビデオ、模型
<ワークショップ>9月10日午後1時30分から4時(現在未確定)「裏打」

【東京、梅ヶ丘】「梅ヶ丘アートセンター」
9月29日(金)〜10月11日(水)
「和紙の最前線」・・・日本の楮を使い、昔ながらの木灰で漂白しているのが「和紙」
であって、それ以外は「和紙」というのはおかしい、という言い方をするのも少し杓子
定規な気もします。・・・和紙を良く知る浜中さんだけに、深く考えさせられます。
<展示内容>
・伝統的な本物の和紙として、今でも雪晒しで漂白している「内山和紙」
・大判を漉く技術を発展させてきた「越前和紙」
・機械漉きを発展させ、和紙を産業化してきた「因州和紙」
・楮やミツマタ以外の植物繊維による「和紙」の取り組み、月桃紙、ケナフ紙ほか
・その他、全国からの新しい試みを展示いたします。
<素材と造形を考える会>10月7日(土)午後2時〜4時★準備を手伝ってくださる方、
大募集しています!

【来年の青年の集い in新潟】
先日岐阜で開催された「新・青年の集い」は、来年は新潟の小国で開催されます。
お問い合わせは
「小国和紙生産組合」
電話0258-95-3016 フアックス0258-95-3164 担当今井様
まだ開催時期は決まっていないそうで、上記の宛先に「新青年の集いの資料希望」
とでもフアックスを送られると後日日程等をご案内頂けるとのことです。
========

その他のイベント情報をお待ちしています。
(基本的にお送り頂いた情報は全て掲載するつもりです。)

============================================================

■□■編集後記■□■

インターネット企画の第二弾!
8人集めて便箋を作る計画は見事に実現しました。
引き続き第2次募集を始めています。
http://www.washiya.com/sukashi/sukashi.html

以前より計画していた『和紙屋の掲示板』ですが、漸く出来ました。
http://www.washiya.com/
のトップページBBSからおはいり下さい。(ちなみに掲示板の事をBBSと呼ぶら
しいです)
結局私はCGIの勉強がはかどらず、この掲示板はティーカップさんの掲示板を使わせ
て頂いてます。
凄いのはi-modeでも対応しているので、i-modeさえあれば掲示板に読み書き
出来るのです。
『和紙屋の掲示板』の中にi-mode対応のボタンが御座いますので指示に従いますと
i-mode専用のあなたの専用アドレスが後ほど贈られてきます。何と!J-PHONEにも
専用に対応してくれます。凄い。

======

「街角でこんな素敵な和紙を見つけた。私のお薦め和紙活用法、今度こんな
イベントを開催する予定」・・・等々、和紙情報をお寄せ下さい。
このマガジンは読者も参加できるマガジンです。
和紙関係でしたら求人情報も掲載致します。お気軽にどうぞ!
逆に売り込みもOK

本通信は転送は自由です。その時は下記署名と一緒にお願いいたしますね。

:・'★彡゜'・:*:.。.:☆彡*:・'゜:*:・'゜★彡。.:*:・'゜:・'。.:

 〜清き心で清水で漉いて〜干した奉書の色白さ〜♪
                     <越前紙漉き歌>

V ..V  〜♪五箇に生まれた〜 杉原吉直
ヨ[//]E   mailto:sugihara@washiya.com
V ..V  
ヨ〔x〕E      五箇は越前、五箇山は富山!
〜〜〜〜〜〜〜   * * * * * * * * * * * * * * *
==ちょっと宣伝==
●ついに!羽二重紙は杉原商店の登録商品となりました。
●フアックス 0778-42-0144
●和紙情報満載の楽しいページです。
http://www.washiya.com/
=========================
★「杉ちゃんのひとりごと」パックナンバーはこちら・・・
http://www.washiya.com/magazine/magazine.html
========================
★「杉ちゃんのひとりごと」の配信アドレスの登録、削除、変更は
http://www.washiya.com/magazine/magazine.html#touroku


にて、手続きをお願いいたします。


本ページは杉原吉直すぎはらよしなおが保守しています。
〒915-0235株式会社杉原商店
福井県今立郡今立町不老17-2
TEL0778-42-0032 FAX0778-42-0144
mailto:sugihara@washiya.com
http://www.washiya.com
ご意見・ご要望などはご遠慮なく E-mail sugihara@washiya.com

All right reserved Copyright(C)Y.SUGIHARA 1999-12 このサイト内容の無断掲載を禁じます。ご一報下さい。

[washiya.com 和紙屋のトップページ]
[ちぎってシリーズ] [羽二重紙] [リンク集]